ブライダル、ファミリーフォト、企業撮影、そして水中フォト。
撮影する場所は違っても、その中心にはいつも「人」があります。
写真を撮る前に、相手とどう向き合うか。
その積み重ねが、一枚の写真につながっているように感じました。
水泳に打ち込んだ学生時代
学生時代、写真はまだ身近なものではありませんでした。大学では法学部に進学。とはいえ、ご本人いわく「水泳をするために大学へ行っていたようなもの」だったそうです。3歳から始めた水泳は、高校時代には県ベスト8、大学ではインカレにも出場しました。
卒業後は大手印刷会社へ入社し、営業として社会人生活をスタートします。新規の飛び込み営業から、印刷物や販促物の提案まで。時には、ディーラーの来店イベントで使う「じゃがいも詰め放題」のじゃがいもまで手配したこともあったそうです。
「営業って、本当に何でもやる仕事なんですよ。」
そう笑う香川さん。お客様の話を聞き、課題を考え、提案する。その経験は、フォトグラファーになった今も生きています。企業撮影では、お客様が何を求めているのか。代理店は、どんな写真を期待しているのか。相手の立場で考える力は、営業時代に培われたものなのかもしれません。
香川さんの人柄の良さに魅せられるクライアントも多いというのも分かる。
「好きなことを仕事にしている人」が、近くにいた。
写真に興味を持つきっかけは、身近な存在でした。お姉さんと、その当時のパートナー。二人はブライダルフォトの撮影を仕事にしていました。好きなことを仕事にし、イキイキしている姿を見て、「いいな」と思っていたそうです。
そして給与を貯めて、初めて一眼レフカメラを購入。休日になると撮影現場について行き、ブライダル撮影を手伝うようになりました。そこで学んだのは、カメラの技術ではありませんでした。
「一番は人との接し方ですね。」
結婚式という、一生に一度の日。緊張している新郎新婦。うれしさと寂しさが入り混じるご家族。一人ひとりとどう向き合い、自然な表情を引き出していくのか。その姿を間近で見ながら、人を撮る仕事の奥深さを知っていきました。やがて週末はフォトグラファー、平日は会社員という生活に。次第に週末が楽しくなり、フォトグラファーとして生きていくことを決意しました。
カメラを操る手。プロを感じさせる。
スタジオには子供用の可愛らしい衣装が揃っている。
人を撮る仕事
現在の仕事は、ブライダルだけではありません。ファミリーフォト。イベント撮影。そして企業撮影。撮るものは変わっても、香川さんが向き合っているのは、いつも「人」です。
「もともと、人が好きなんですよ。」
ファミリーフォトでは、子どもたちの気持ちをどう引き出すか。企業撮影では、その会社らしさをどう表現するか。写真を撮る前に、まず相手を知ること。それが、香川さんにとって一番大切な仕事なのだと思いました。
水中写真との出会い
香川さんには、もう一つの顔があります。水中フォトグラファーとしての活動です。きっかけは、インターネットで偶然目にした一枚の写真でした。メキシコで活動する水中フォトグラファーが撮影したウェディングフォト。水の中とは思えないほど幻想的な世界が広がっていました。
「日本ではまだ誰もやっていないし、これ、おもしろいなと思ったんです。」
水泳経験と写真。それまで別々だった二つが、一つにつながった瞬間でした。最初は自己流で挑戦しました。でも、カメラは水没する。思うような写真も撮れない。「全然ダメでした(笑)」
だからこそ、本場で学びたいと思いました。ちょうどその頃、結婚が決まります。「新婚旅行に行くなら、あのフォトグラファーに会いに行こう。」そう決めて、自らメキシコのフォトグラファーへ連絡を取り、ワークショップを受けることにしました。
現地では夫婦で水中ウェディングフォトを撮影してもらい、香川さん自身も教わりながら、奥様をモデルに撮影を体験しました。光の使い方。浮遊感。透明度。水中でのコミュニケーション。自己流では分からなかったことを、現場で学んでいったそうです。
今でも水中撮影は簡単ではありません。天候や透明度に左右されることも多く、沖縄での撮影では台風の影響で予定を変更し、透明度の高い場所を探しながら撮影したこともありました。大変な仕事です。けれど話している香川さんの表情からは、その大変さも含めて楽しんでいることが伝わってきました。
水中写真は時間をかけられないため緊張の連続だそう。
会社として育てていく
現在、香川さんは株式会社モノゴコロの代表として、チームで仕事をしています。写真を撮ることはもちろんですが、今は会社を育てていくことにも面白さを感じているそうです。
スタッフには、細かく教え過ぎない。基本は伝える。その先は、それぞれの個性を大切にする。そうすることで、一人ひとりが自分らしいフォトグラファーへと育っていくと考えています。
そんな香川さんが、最近大きく変えたことがあります。自分自身は、日曜日の撮影を受けないと決めたことです。ブライダルや家族写真の仕事では、日曜日は最も忙しい曜日。だからこそ、この決断は簡単ではありませんでした。
これまで仕事に夢中で、気が付けば子どもたちが一番甘えたい時期に、十分な時間をつくれていなかった。子どもが親と一緒に過ごしたいと思ってくれる時間は、思っているより短い。そのことに気付き、日曜日は家族と過ごす日にしようと決めたそうです。
もちろん、仕事が気にならないわけではありません。それでも、自分が担当しない日曜日の撮影は、一緒に働く仲間に任せる。仲間を信頼することも、代表としての大切な役割だと考えています。
「家族写真を撮る会社ですから。」
その一言が、とても印象に残りました。代表である自分が、まず家族を大切にする。その姿勢が、会社の価値やブランドにもつながっていく。そんな思いが、この決断には込められていました。
今、香川さんにとって一番面白いのは、写真を撮ることだけではありません。仲間が育ち、会社が育ち、お客様とのつながりが広がっていく。そんな未来をつくっていくことも、代表としての大きなやりがいになっているようでした。
編集後記
営業からフォトグラファーへ。そして、水中フォトグラファーへ。一見すると、大きく方向転換を繰り返してきたようにも見えます。でも、お話を聞いていると、その中心にはいつも「人」がいました。
営業では、お客様と向き合う。ブライダルでは、新郎新婦やご家族と向き合う。企業撮影では、その会社らしさと向き合う。水中写真では、自然と向き合いながら、その人だけの一枚を残す。
そして今は、フォトグラファーとしてだけではなく、経営者として会社を育てることにも面白さを感じています。その歩みもまた、一枚一枚の写真と同じように、人とのつながりを大切にした香川さんらしい未来へ続いているのだと思いました。