企業紹介映像や採用動画、展示会映像など、
多くの制作を手掛けながら、一貫して大切にしていることがあります。
それは、「作り手」の想いを伝えること。
その原点は、子どもの頃に出会った一台のカメラにありました。
暗室が、遊び場だった。
藤田さんがカメラに出会ったのは、小学生の頃でした。祖父は、芦屋カメラクラブの創設メンバーの一人。祖父の家には引き伸ばし機があり、撮った写真は風呂場を暗室にして現像する。子どもの頃から、そんな光景が当たり前のようにありました。今思えば、とても恵まれた環境だったと藤田さんは振り返ります。
中学校へ入学すると、入学式で写真部の先輩たちが自由に体育館を歩き回り、夢中でシャッターを切る姿を目にします。
「写真部って、格好いい。」
その日に入部を決め、以降写真漬けの毎日が始まりました。気が付けば、写真は特別な趣味ではなく、自分のすぐそばにある存在になっていました。
「スペシャリストでもありゼネラリストでもある」、それが藤田さんを表す言葉。
映画を目指して、写真にたどり着いた。
高校には写真部はなく、今度は写真よりも映画の世界に憧れました。その後、映像について学べる大学を目指すものの、九州の別の大学の芸術学部写真学科に入学。その大学では映画研究部に入部し、映画製作に没頭しました。ところが、映画づくりを経験する中で、一つのことに気付きました。映画は、多くの人が役割を分担してつくる世界。カメラマンは、その中の一人でしかありません。
「映像をやるなら、一枚の絵をつくれないと。」
そう考えた藤田さんは、広告写真の世界へ進みます。映像を諦めたのではありません。映像を極めるために、まず写真を極めよう。それが、藤田さんの選んだ道でした。
厳しい修業と、遠回りした時間。
卒業後は、福岡の広告写真家のもとへ弟子入りします。とても厳しい現場でした。光のつくり方。構図。現場での立ち居振る舞い。広告写真の考え方。一つひとつを身体で覚えながら、五年間、師匠のもとで修業を積みました。
しかし、祖父が倒れたことをきっかけに、一度その世界を離れることになります。営業職など、写真とはまったく違う仕事を経験しました。けれど、その時間は決して遠回りではありませんでした。
人と向き合うこと。何かを提案すること。現場で働く人たちの姿を見ること。そのすべてが、今の映像づくりにつながっていると藤田さんは話します。
現場の臨機応変な対応もこれまでの経験によるもの。
藤田さんいわく、自分の原点は写真にあるという。
「前職」で学んだ、伝えるという仕事。
再び広告の世界へ戻った藤田さんは、東大阪市にある写真スタジオ「2055」に就職し、写真だけでなく映像制作も任されるようになります。
企業紹介映像。
採用映像。
製品プロモーション。
気が付けば撮影だけでなく、照明、台本制作、コピーライティングまで手掛けるように。つまり映像制作のすべてを一人で担う機会も少なくありませんでした。
ここで、多くの企業の映像制作に携わるようになります。
写真を学び、
映像を学び、
現場を知り、
企業を知る。
その積み重ねが、今の仕事の土台になっています。
「もっと自分らしい映像をつくりたい。」
そんな思いから独立し、2019年に合同会社ツクリテラを立ち上げました。
「ツクリテラ」という少し変わった社名には、「作り手たち」という意味が込められています。
ものづくりの作り手。
映像づくりの作り手。
それぞれの"作り手"が手を取り合い、課題に向き合い、一緒に価値を生み出していく。その想いを、社名そのものに込めました。
作り手の熱量を、映像で伝えたい。
現在、藤田さんが数多く手掛けているのは、メーカーやものづくり企業の映像制作です。取材帰りの車の中で、こんな話をしてくれました。
「モデルさんやタレントさんを撮ることを得意としているフォトグラファーはたくさんいます。もちろんライティングも大事です。でも、職人さんは違うんです。そのまま撮っただけでは、その人の熱量は伝わらない。」
だからこそ、現場を歩きます。職人と話します。何を考え、どんな想いで、その仕事に向き合っているのか。そこまで理解して初めて、映像や写真になるのだと言います。
「僕は、作り手の現場が好きなんですよ。」
その言葉が、とても印象に残りました。映したいのは、製品ではありません。その製品を生み出す人たちの仕事であり、積み重ねてきた時間なのです。
現場を知っている藤田さんが撮る映像に説得力がある。
編集後記
今回の取材で感じたのは、藤田さんは「映像をつくる人」でも、「写真を撮る人」でもないということでした。取材中も、帰りの車の中でも、何度も話題に上がったのは「作り手」のことでした。
工場の空気。職人の手。現場で交わされる会話。そこに流れる熱量を、どうすれば伝えられるのか。そのことを突き詰めて考えている人でした。
派手な映像をつくりたいわけではない。伝えるべき人や技術に、きちんと光を当てたい。写真も。映像も。その先にあるのは、誰かが積み重ねてきた「仕事」。その仕事に真っすぐ向き合う藤田さんだからこそ、作り手の熱量を映像として残せるのだと感じました。
Profile
藤田 猛士
ツクリテラ合同会社 代表 / 映像ディレクター
幼少期より祖父の影響でカメラに親しむ。大学で映画制作を学んだ後、福岡の広告写真家に師事し五年間修業。東大阪の写真スタジオで映像制作全般を担当した後、2019年にツクリテラ合同会社を設立。メーカー・ものづくり企業を中心に、企業紹介映像・採用映像・展示会映像などを手掛ける。「作り手の熱量を映像で伝えること」を一貫したテーマに活動中。